体が硬くてもヨガはできる?アシュタンガヨガに柔軟性は必要?

「体が硬くても、ヨガはできますか?」
ヨガを始めてみたいという方から、よく聞かれる質問のひとつです。
「前屈しても手が床につかない」
「開脚ができない」
「身体が硬くて、ヨガのポーズができる気がしない」
そんなふうに、自分の身体の硬さを理由に、ヨガを始めることをためらっている方もいるかもしれません。
確かに、ヨガをしている人の写真を見ると、身体を大きく曲げたり、脚を高く上げたり、とても柔らかそうなポーズをしている人がたくさんいます。
では、アシュタンガヨガはどうでしょうか。
アシュタンガヨガには、深い前屈や股関節を大きく動かすポーズ、足を頭の後ろにかけるようなポーズなど、かなり柔軟性が必要に見えるアーサナがたくさんあります。
「普通のヨガでも身体が硬いと難しそうなのに、アシュタンガヨガはもっと身体が柔らかくないとできないのでは?」そう思うのも、無理はありません。
実際、長くアシュタンガヨガを練習している人の中には、とても柔軟な身体を持っている人もいます。
でも、だからといって、身体が柔らかくなければアシュタンガヨガを始められないわけではありません。
むしろ、アシュタンガヨガを練習してきた私自身は、「柔軟性があること」と「アシュタンガヨガの練習ができること」は、同じではないと感じています。
今回は、単に「体が硬くても大丈夫ですよ」という話ではなく、なぜアシュタンガヨガでは柔軟性が必要に見えるのか、そして練習の中で柔軟性とどう付き合っていくのかについてお話しします。
「体が硬い=アシュタンガヨガができない」ではない
まず知っておいてほしいのは、身体が硬いことと、アシュタンガヨガができないことは別だということです。
アシュタンガヨガには、前屈や股関節の動きが大きいポーズなど、柔軟性が必要に見えるアーサナがたくさんあります。
そのため、完成したポーズの写真や、長く練習している人の姿を見ると、
「自分にはこんなことできない」「こんなに身体が柔らかくないと始められないのでは?」
と思ってしまうかもしれません。
でも、最初からその形ができる必要はありません。
アシュタンガヨガでは、その人の現在の身体の状態や練習の段階に合わせて、できるところから少しずつ練習していきます。
つまり、「完成したポーズができること」と「そのポーズを練習すること」は、同じではありません。

アシュタンガヨガでは、なぜ柔軟性が必要に見えるのか?
では、なぜアシュタンガヨガは「身体が柔らかくないとできない」と思われやすいのでしょうか。
それは、アーサナの完成形を見ると、どうしても柔軟性に目がいくからだと思います。
深い前屈、股関節を大きく開く動き、足を頭の後ろにかけるようなポーズなど、長く練習している人の身体は、とても柔らかく見えることがあります。
けれど、そのポーズができるようになるまでには、一人ひとり違う時間がかかります。
そして、そこに至るまでの過程には、柔軟性だけではなく、呼吸や身体の安定、筋力、バランス、集中力など、さまざまな要素があります。
完成形だけを見て、
「私はあそこまでできないから、自分には無理」
と判断してしまうのは、少しもったいないことなのです。
「できるポーズ」と「練習するポーズ」は違う
これは、アシュタンガヨガを始める方にも、すでに練習している方にも知っておいてほしいことです。
例えば、前屈で手が足に届かなかったとします。
では、その人は前屈のポーズを練習できないのでしょうか。
もちろん、そんなことはありません。
今の身体の状態の中でできるところまで行い、呼吸をしながらそのポーズを練習することができます。
アシュタンガヨガでは、最初から完成形を目指して身体を無理に動かすのではなく、今の自分に必要な練習を繰り返していくことが大切です。
昨日より深く前屈できたか。
足がどこまで床に近づいたか。
そういった変化ももちろんあります。
でも、それだけが練習の成果ではありません。
柔軟性は「目的」ではなく、練習の中で変化していくもの
「身体を柔らかくしたいから、ヨガを始めたい」
これは、とても自然なきっかけだと思います。
実際に、アシュタンガヨガを続ける中で身体の可動域が変わっていくこともあります。
ただ、柔軟性そのものを目的にしてしまうと、少し苦しくなることがあります。
「今日は昨日より柔らかくなったか」
「前より深く入れたか」
「他の人はできているのに、自分はできない」
そんなふうに、毎回の練習を身体の柔らかさだけで評価してしまうからです。
身体は毎日同じではありません。
睡眠が足りない日もあれば、仕事で疲れている日もあります。
前日の練習量や、その日の体調、生活環境によっても身体の感覚は変わります。
だからこそ、今日の身体を今日の身体として観察する。
無理に変えようとするのではなく、呼吸をしながら今の状態を知る。
そういうことも、アシュタンガヨガの練習の一部なのだと思います。
私自身も、すぐにできるようになったわけではありません
私自身、アシュタンガヨガを始めた頃から、何でもできていたわけではありません。
長く練習していても、なかなか先に進めなかったポーズがあります。
例えば、ドウィパーダ・シルシャーサナ。
私の場合、このポーズができるようになるまでに5年ほどかかりました。
当時は、周りの人が先に進んでいくのを見て、
「自分はいつになったらできるんだろう」
と焦ったこともありました。
先生からも、まだ先に進まない方がいいと言われていました。
できないことにフラストレーションを感じることもありました。
でも、今振り返ると、その5年間は「何もできなかった5年間」ではありませんでした。
その間にも、身体の使い方は少しずつ変わっていました。
呼吸をしながら練習すること。
できないことに向き合うこと。
焦らずに繰り返すこと。
そして、自分の身体の状態を少しずつ理解していくこと。
ポーズが完成していなくても、練習そのものは続いていたのです。
「できない時間」にも、身体は練習している
アシュタンガヨガを続けていると、どうしても「できるようになったこと」に目が向きます。
次のポーズに進めた。
前より深く入れるようになった。
バインドができるようになった。
身体が柔らかくなった。
もちろん、そうした変化は嬉しいものです。
でも、ポーズが完成していない時間にも、身体はさまざまなことを学んでいます。
呼吸を安定させること。
足をどう使うのか。
どこに力を入れて、どこを緩めるのか。
身体をどう支えるのか。
そして、自分がどこまでなら無理なく動けるのか。
こうしたことは、ポーズの完成形だけを見ていては気づきにくい部分です。
だから、
「まだできない」=「まだ進んでいない」
とは限りません。
ポーズが何年も変わらないように感じる時期にも、身体の中では少しずつ変化が起きていることがあります。
体が硬い人が練習するときに大切なこと
では、実際に身体が硬いと感じている人は、どんなことを意識して練習すればいいのでしょうか。
1.無理に柔らかくしようとしない
「早く柔らかくなりたい」と思うほど、身体を強く引っ張りたくなることがあります。
でも、無理に身体を押し込むことと、身体の可動域が少しずつ広がっていくことは同じではありません。
今の自分の身体に必要な強さと、必要なスペースを見つけていくことが大切です。
2.呼吸を止めない
アシュタンガヨガでは、ポーズの形だけではなく呼吸も大切です。
「もっと深く」と頑張るあまり、呼吸が止まってしまうのであれば、一度その力を緩めてみる。
呼吸を続けられる範囲の中で、自分の身体を観察していきます。
3.完成形を目標にしすぎない
Instagramなどで、完成されたアーサナを見る機会はたくさんあります。
でも、その写真の人にも、そこに至るまでの時間があります。
今の自分と誰かの完成形を比べても、あまり意味はありません。
今日の自分の練習に集中すること。
それだけでも十分です。
4.先生から与えられた練習を繰り返す
マイソールクラスでは、一人ひとりの練習の進み方が違います。
同じ時期に始めても、身体の状態も、これまでの経験も、生活も違います。
だからこそ、自分に与えられた練習を繰り返していくことが大切です。
「隣の人は次のポーズをやっているから、自分もやりたい」
ではなく、
「今の自分には何が必要なのか」
という視点を持ってみてください。
5.他の人と比べない
これは簡単なようで、とても難しいことです。
同じ部屋で練習していると、どうしても周りの人が目に入ります。
でも、アシュタンガヨガは競争ではありません。
身体の柔らかさも、練習の進み方も、人それぞれです。
自分の呼吸と身体に意識を戻していく。
その繰り返しが、自分自身の練習をつくっていきます。
アシュタンガヨガで大切なのは「どこまでできるか」だけではない
アシュタンガヨガの練習を続けていると、
「次のポーズに進めた」「このポーズができるようになった」
という変化に目が向きます。
でも、練習の中で起きている変化は、それだけではありません。
以前より自分の身体の状態に気づけるようになった。
無理をしていることに気づけるようになった。
呼吸が乱れたときに、自分で少し戻せるようになった。
できないことに対して、以前ほど焦らなくなった。
そんな変化も、練習を続けているからこそ生まれてくるものです。
私自身、練習してきた中で、「できるようになったこと」だけではなく、できない時間をどう過ごすかということを何度も考えてきました。
そして今は、ポーズの完成だけが練習の目的ではないと感じています。
体が硬いから、もう少し柔らかくなってから始める?
もし今、
「もう少し身体が柔らかくなってから、アシュタンガヨガを始めよう」
と思っているなら、柔らかくなるのを待つ必要はありません。
アシュタンガヨガは、完成した身体で始めるものではなく、今の自分の身体から練習を始めていくものだからです。
最初からすべてのポーズができる必要もありません。
前屈で手が床につかなくてもいい。
足が思うように動かなくてもいい。
周りの人と同じようにできなくてもいい。
まずは、自分の呼吸を感じながら、自分の身体で練習してみる。
そこから少しずつ、自分自身のアシュタンガヨガが始まっていきます。
身体の硬さを理由に始めることを迷っている方も、まずは今の身体のまま、一度練習に来てみてください。
柔らかくなってから始めるのではなく、今の自分から始める。
それも、アシュタンガヨガの練習のひとつだと思っています。




コメント