なぜアシュタンガヨガは満月と新月にお休みするの?
- 6 日前
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アシュタンガヨガでは、満月と新月の日を「ムーンデー(Moon Day)」と呼び、伝統的にアーサナの練習をお休みします。毎日のように練習するアシュタンガヨガなのに、なぜ月に2回もお休みがあるのでしょうか?
「月の満ち欠けと、身体にはどんな関係があるの?」
初めてムーンデーを知った方は、そんな疑問を持つかもしれません。
その背景には、ヨガに古くから伝わる「身体と自然はつながっている」という考え方があります。
ヨガで考える「5つのプラーナ」
ヨガでは、私たちの身体には「プラーナ(Prana)」と呼ばれる生命エネルギーが流れていると考えます。
そして、このプラーナにはさまざまな働きがあり、大きく5つに分けて考えられています。(画像参照)
これをパンチャ・プラーナ(Pancha Prana)といいます。「パンチャ」はサンスクリット語で「5」を意味します。5つのプラーナには、それぞれ異なる方向性と働きがあります。
その中でも、ムーンデーを理解するうえでよく取り上げられるのが、プラーナ・ヴァーユ(Prana Vayu)とアパーナ・ヴァーユ(Apana Vayu)です。
プラーナ・ヴァーユは、胸や頭部を中心に、内側から上へ向かって働くエネルギー。
一方のアパーナ・ヴァーユは、下腹部を中心に、下へ向かって働き、排泄など「手放す」方向に関係するエネルギーとされています。
ヨガの伝統では、この二つは身体の中で常に働いており、呼吸とも深く関係しておりアーサナを練習するときにも働いていると考えています。
月と新月、プラーナとアパーナ
アシュタンガヨガのムーンデーについて説明する際、満月はプラーナ・ヴァーユ、新月はアパーナ・ヴァーユと関連づけて説明されることがあります。
満月は、月が最も満ちた状態。呼吸でいえば、吸う息の終わりにあたる状態と重ねられ、プラーナの上向きで拡張する力が強くなると考えられています。そのため、満月の頃はエネルギーが高まり、活動的になる一方で、気持ちが高揚したり、地に足がつきにくくなったりすると説明されます。
反対に新月は、月が見えなくなる状態。呼吸でいえば、吐く息の終わりにあたる状態と重ねられ、アパーナの下向きで収縮する力が強くなると考えられています。新月の頃は、静かで落ち着いた状態になりやすい一方、身体が重く感じられたり、強い身体活動には向きにくいとされます。
このように考えると、満月と新月は、どちらも普段とは少し異なるエネルギーの状態にある。だからこそ、その日は無理にアーサナの練習をせず、身体を休ませる。これが、ムーンデーの一つの考え方です。
もちろん、これは現代科学によって「満月や新月には必ずこのような身体の変化が起こる」と証明されているという話ではありません。あくまでも、ヨガの伝統の中で受け継がれてきた、身体と自然に対する考え方として捉えるのがよいでしょう。
インドの暮らしの中にある「月」と「祭日」

この「月のサイクルを意識する」という感覚は、私自身がインドで暮らしていたときに、より身近に感じるようになりました。インドでは、日本でいう祝日とは少し違い、年間を通してさまざまな宗教的な祭日があります。
毎月のように何かしらの祭日がありますが、だからといって、その日に会社や学校が必ず休みになるわけではありません。それでも、祭日の日は普段とは少し違います。
家庭やお店などでは、朝からプージャ(Puja)と呼ばれるお祈りのための祭壇を設けたり、神様へのお供えを準備したりします。
私がインドで暮らしていた頃も、祭日の朝には、普段とは違う準備をしている人たちを見かけました。
仕事や学校はいつも通りあっても、生活の中では、
「今日は特別な日」
ということが自然に意識されているのです。
そして、インドの宗教的な祭日や行事には、月の満ち欠けを基準とした暦が深く関係しています。
満月や新月も、単に「月の形が変わる日」というだけではありません。
月のサイクルは、宗教的な行事や人々の生活と結びつき、ごく自然に意識されています。
日本で暮らしていると、満月や新月を意識して生活することは、それほど多くありません。
でもインドで暮らしていると、
「今日は満月だから」
「今日は新月だから」
「今日は○○の祭日だから」
ということが、日常の中に自然に入ってきます。
私自身、インドで生活したことで初めて、月のサイクルや祭日が人々の暮らしの中にこれほど自然に存在していることを実感しました。そう考えると、アシュタンガヨガにおけるムーンデーも、単に「満月と新月は身体に危険だから休む」という一つの理由だけではなく、月のサイクルを意識してきたインドの文化や、自然のリズムとともに暮らすという感覚の中で理解すると、少し違った見え方をするのではないでしょうか。
ムーンデーにすること

では、ムーンデーには何をすればいいのでしょうか?
アーサナの練習を休むからといって、何もしないで一日を過ごす必要はありません。
シャラート先生は、ムーンデーの過ごし方について、オイルバスをしたり、情報から少し離れたり、自然の中で過ごしたりすることを勧めていました。私自身、その話を何度も聞いてきましたが、今振り返ると、とてもシンプルで大切なことを教えてくれていたのだと思います。
普段の生活では、私たちは思っている以上にたくさんの情報に触れています。スマートフォンを見て、SNSをチェックして、ニュースを読んで、仕事の連絡に返信する。身体を休めているつもりでも、頭の中はずっと動き続けていることがあります。だからこそムーンデーには、アーサナの練習だけではなく、普段している何気ない行動からも少し距離を置いてみる。
例えば
スマートフォンを置いてみる。
SNSやニュースから離れてみる。
人ごみを離れて自然の中を歩いてみる。
ゆっくりお風呂に入る。
オイルバスをして、自分の身体に意識を向けてみる。
そんなふうに、普段とは少し違う時間を過ごしてみるのもいいのかもしれません。
「休むこと」も練習の一部
アシュタンガヨガでは、基本的に週6日の練習が伝統とされています。
毎日練習するからこそ、休むこともまた大切になります。
身体の声を聞くこと。
今の自分の状態を知ること。
必要なときに立ち止まること。
そして、また次の日に練習へ戻ってくること。
ヨガは、アーサナをどこまで完成させられるかだけが練習ではありません。
練習する日があるから、休む日がある。
そして、
休むことがあるから、また長く練習を続けていくことができる。
ムーンデーは、自然のリズムに少し意識を向け、普段の練習から一度離れる日。
そして、身体だけでなく、頭の中に入ってくるたくさんの情報からも少し離れ、自分自身を静かに整える日。
そう考えると、月に2回やってくるこの「お休み」は、単にアーサナをしない日ではなく、アシュタンガヨガを長く続けていくための、大切な時間なのかもしれません。
満月と新月がやってきたら、いつものように「練習をしなければ」と思うのではなく、少し立ち止まって、自分の身体や呼吸、そして自然に目を向けてみる。それもまた、アシュタンガヨガの練習の一つなのだと思います。




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